「自己否定は良くない」――そんな言葉を耳にする機会は少なくありません。
ポジティブに生きることが良しとされ、「自分を認める」「自己肯定感を高める」ことが大切だと、多くの本や記事でも語られています。
でも、現実の私は「このままじゃダメだ」「やっぱり自分は足りない」と、自分にダメ出しを繰り返してきました。
頭の中で何度も自分を責め、そのたびに気持ちが落ち込んで、ただ立ち止まってしまう。否定の言葉を投げかけることで、むしろ身動きが取れなくなっていたのです。
そんなとき、ふと目にした「建設的自己否定」という言葉が、心に引っかかりました。
相反する言葉の組み合わせなのに、不思議と腑に落ちる感覚があったのです。
自己否定で止まってしまうとき
自己否定をすると、そこから思考が動かなくなることが多いと思います。
「自分はこういうところがダメだ」
そう思った瞬間、まるで自分にレッテルを貼ってしまうような気持ちになり、その先へ進めなくなってしまう。
何度も「ダメだ」という言葉を繰り返しては、心の中でぐるぐる回り続ける。悪循環の中で出口を見失う――そんな経験が私にはよくあります。
そもそも自己否定の多くは、自分の内側からだけではなく、他人からの言葉によって強められるものです。
「そんなこともできないのか」
「まだまだだな」
「もっとがんばらないとダメじゃないか」
親や目上の人、先輩からの何気ない一言に、思いっきり落ち込んでしまうことがありました。
誰かと比べて
「自分は劣っている」
と感じたときも同じです。
その瞬間、心に重石を乗せられたように動けなくなり、
「建設的」や「前向き」
といった言葉は頭の片隅にも浮かびませんでした。
そこから抜け出すには、それ相応の時間が必要でした。
そして、そんな時期に
「そんなことないよ」
と寄り添ってくれる人の存在がどれほど大きかったか。
自分の否定感に覆われているときには、自分一人の力だけで切り替えることはとても難しいのだと思います。
誰かの言葉が小さな灯のように差し込んでくれて、ようやく前を向けることがありました。
「建設的自己否定」という逆説の力
「建設的自己否定」という言葉を読んだとき、最初は「矛盾しているな」と感じました。
否定はネガティブで、建設的はポジティブ。まるで正反対の響きを持つ言葉同士だからです。
けれども、その意味を知って納得しました。
それは
「ダメ出しをした後に、“じゃあ次はどうするか”を考える」
という感覚なのだと。
否定で終わらせるのではなく、その先に一歩をつなげていく。
この一言が加わるだけで、自己否定はただの重しではなく、未来へ向かうための踏み台に変わっていくのです。
認めることから始まる
本当は、自分に「ここがダメだった」と言うこと自体、とても勇気がいることです。
認めてしまえば痛みが伴いますし、「欠点のある自分」を受け入れるのは簡単なことではありません。
だからこそ多くの場合、人は自己否定を避けるか、あるいは否定の言葉だけを残してそのまま立ち止まってしまうのかもしれません。
けれど、
「ダメなところ」をしっかり認めたうえで
「じゃあ、どうしよう?」
と続けてみると、不思議と気持ちが軽くなります。
小さなことでも前に進む道筋が見えてくる。否定から始まっても、受け止め方ひとつで未来へと続くきっかけになるのです。
自然にできる人とできない人
もちろん、この切り替えが自然にできる人もいると思います。失敗をしてもすぐに「次はこうしよう」と考えられる人。
そういう人を見ていると、とてもたくましく見えて羨ましくなることがあります。
けれど私自身は、どうしても否定の段階で足が止まってしまうタイプです。
頭では「建設的に切り替えればいい」とわかっていても、心がついていかない。そんな自分にまたダメ出しをしてしまい、さらに落ち込むこともあります。
それでも、「建設的自己否定」という言葉に出会ったことで、ひとつの視点をもらえた気がしています。
完璧にできなくても、否定に終止符を打つのではなく、「次へ」とつなげられるだけでいい。そう思うだけで、少し気持ちが楽になるのです。
まとめ
「建設的自己否定」という言葉は、自己否定に押しつぶされそうになる私に、小さな救いをくれました。
否定で終わるのではなく、そこに未来をくっつけること。
「このままじゃダメだ」で終わるのではなく、
「じゃあ次はどうする?」
と自分に問いかけること。
それが、ゆっくりでも前に進むための心のリズムになるのかもしれません。
今日のそら色
ダメを終点にせず、その先に小さな道を描く――空はいつだって続いている。